住宅ローンの審査は、年収だけで決まるわけではありません。金融機関は「この人は最後まで返し続けられるか」「万一のときに回収できるか」を、いくつもの項目から判断しています。この記事では、国土交通省の調査で金融機関が実際に審査で見ている項目を確認したうえで、事前審査に通らなかったときに最初に確認したいことを、保険も不動産も売らないFPの立場から整理します。
- 審査は「返済能力」「本人の属性」「物件の担保価値」の3つの軸で見られる
- 国土交通省の調査では、完済時年齢(98.4%)、借入時年齢(96.2%)、健康状態(96.1%)、年収(94.2%)を審査項目にする金融機関が多い
- フラット35の返済負担率の基準は、年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下
- 落ちたときは、理由を推測して「変えられる条件」から見直す。信用情報は自分で開示して確認できる
出典:国土交通省「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」(長期・固定金利の住宅ローン等に関する融資審査、回答994機関)
住宅ローンの審査で見られる3つの軸
金融機関によって基準は異なりますが、審査で見られる項目は大きく3つに分けられます。
| 返済能力 | 年収、返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)、ほかの借入の有無と返済状況 |
|---|---|
| 本人の属性 | 借入時と完済時の年齢、勤続年数、雇用形態、健康状態(団体信用生命保険に加入できるか)、信用情報 |
| 物件の担保価値 | 購入する物件の評価額、建築基準法などの法令に適合しているか |
返済能力は「毎月返していけるか」、本人の属性は「長く安定して返せるか」、担保価値は「返せなくなったときに物件で回収できるか」を見ています。どれか1つが良くても、ほかの軸で引っかかると審査に通らないことがあります。
金融機関が審査で見ている項目【国土交通省の調査】
国土交通省は毎年、全国の金融機関を対象に「民間住宅ローンの実態に関する調査」を行っています。令和7年度の調査で、長期・固定金利の住宅ローン等の融資審査について回答した994機関が、審査項目にしているものは次のとおりです(複数回答)。
| 審査項目 | 審査項目にしている割合 |
|---|---|
| 完済時年齢 | 98.4%(978機関) |
| 借入時年齢 | 96.2%(956機関) |
| 健康状態 | 96.1%(955機関) |
| 年収 | 94.2%(936機関) |
| 勤続年数 | 93.9%(933機関) |
| 担保評価 | 91.0%(905機関) |
| 返済負担率 | 90.9%(904機関) |
| 金融機関の営業エリア | 89.2%(887機関) |
| 連帯保証 | 84.7%(842機関) |
| 国籍 | 80.6%(801機関) |
| カードローン等の他の債務の状況や返済履歴 | 72.5%(721機関) |
| 雇用形態 | 70.6%(702機関) |
上位には年齢と健康状態が並んでいます。年収だけでなく、「何歳で借りて何歳で返し終わるか」「団体信用生命保険に入れるか」が、ほとんどの金融機関で確認されていることがわかります。
健康状態:「団信加入が必要」と回答した機関が866機関
勤続年数:「1年以上」と回答した機関が661機関で最多
特に重視される「返済負担率」
返済負担率は、年収に対して年間の返済額がどれくらいの割合になるかを示す数字です。住宅ローンだけでなく、車のローンやカードローンなど、ほかの借入の返済も合算して計算されます。
フラット35の基準は30%・35%
住宅金融支援機構のフラット35では、すべての借入れの年間合計返済額が、年収に対して次の割合以下であることが条件になっています。
| 年収400万円未満 | 30%以下 |
|---|---|
| 年収400万円以上 | 35%以下 |
ここでいう「すべての借入れ」には、フラット35のほか、ほかの住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、カードローン(クレジットカードのキャッシング、分割払い・リボ払いを含む)などが入ります。年収は、原則として申込みの前年の収入を証明する公的な書類の金額で見られます。
年収500万円の場合の目安
たとえば年収500万円の人がフラット35を使う場合、基準は35%以下です。年間の返済額の合計は175万円まで、月にすると約14.6万円までが上限の目安になります。車のローンを月3万円返している場合、住宅ローンに回せるのは月約11.6万円です。
ただし、金融機関が設ける上限と、家計にとって無理のない水準は別ものです。審査に通る金額が、そのまま「安心して返せる金額」とは限りません。毎月の返済額と割合は返済シミュレーションで確認できます。
本人の属性で見られること
年齢(借入時・完済時)
国土交通省の調査では、完済時年齢を審査項目にする金融機関が98.4%で、「80歳未満」と回答した機関が最も多くなっています。フラット35は申込時の年齢が満70歳未満で、借入期間は「80歳-申込時の年齢」と35年のいずれか短い年数が上限です。45歳で申し込むと最長35年、50歳なら最長30年になります。借入期間が短くなると毎月の返済額が上がり、返済負担率にも影響します。
勤続年数と雇用形態
勤続年数は93.9%、雇用形態は70.6%の金融機関が審査項目にしています。勤続年数の基準は「1年以上」と回答した機関が最も多くなっていました。転職直後や自営業の場合は、求められる書類や見られ方が変わることがあります。
健康状態(団体信用生命保険)
民間の住宅ローンでは、団体信用生命保険(団信)への加入を条件にしている金融機関が多く、調査でも866機関が「団信加入が必要」と回答しています。健康状態によっては加入できず、借入先の選び方が変わることがあります。フラット35は、健康上の理由などで団信に加入しない場合も利用できます。
信用情報
クレジットカードやローンの返済の遅れ、スマートフォン本体の分割払いの滞納なども、信用情報に記録されます。信用情報機関のCICでは、延滞などを含むクレジットの情報は「契約期間中および契約終了後5年間」、ローンやカードの申込みの記録は「照会日から6か月間」保有されます。短い期間に複数の金融機関へ申し込むと、その記録も残ります。
物件の担保価値で見られること
担保評価は91.0%の金融機関が審査項目にしています。金融機関は、返済が滞ったときに物件を売って回収できるかを見ています。購入価格より評価額が低い物件や、建築基準法などの法令に適合していない物件は、希望の額を借りられないことがあります。中古住宅や土地を買う場合は、物件の状況を事前に確認しておきましょう。
事前審査に落ちたときに最初に確認すること
金融機関は、審査に通らなかった理由を教えてくれないのが一般的です。だからこそ、考えられる理由を自分で整理し、変えられる条件から見直すことが大切です。
1. 信用情報を自分で開示して確認する
心当たりがなくても、まず自分の記録を確認します。CICではインターネットで開示でき、手数料は500円(税込)です。マイナンバーカード(署名用電子証明書が有効なもの)とスマートフォンのアプリで本人確認をします。
2. ほかの借入を確認する
車のローンやカードのリボ払い、分割払いは返済負担率に合算されます。完済できるものや、借入額を減らせるものがないか確認します。
3. 借入額と期間を見直す
借入額を下げる、頭金を増やす、返済期間を見直すことで、返済負担率は変わります。物件の価格帯そのものを見直すことも選択肢です。
4. 別の金融機関も検討する
審査の考え方は金融機関ごとに違います。国土交通省の調査(回答852機関)では、スコアリング方式を中心に審査をしている機関が15.7%、一部で使っている機関が24.4%、使っていない機関が59.9%でした。ある金融機関で通らなくても、別の金融機関では判断が変わることがあります。ただし、短期間に申込みを重ねると記録が残るため、条件を見直してから申し込みましょう。
5. フラット35も比べる
フラット35は全期間固定金利で、保証人や保証料が必要ありません。団信に加入しない場合も利用できるため、健康状態で民間の住宅ローンが難しかった人の選択肢になります。
よくある質問
Q. 審査に落ちた理由は教えてもらえますか?
一般的には教えてもらえません。返済負担率、年齢、勤続年数、信用情報、物件の評価など、考えられる理由を自分で整理して見直します。
Q. 信用情報の記録はいつ消えますか?
CICの場合、延滞などを含むクレジットの情報は契約期間中および契約終了後5年間、申込みの記録は照会日から6か月間保有され、期間が過ぎると自動的に削除されます。
Q. 年収が400万円未満でも住宅ローンは組めますか?
組めます。フラット35の場合、年収400万円未満では返済負担率30%以下が基準です。借入額や返済期間をこの範囲に収めることが条件になります。
まとめ:審査に通ることと、返せることは別
住宅ローンの審査は、返済能力・本人の属性・物件の担保価値の3つの軸で判断されます。国土交通省の調査では、完済時年齢・借入時年齢・健康状態・年収を審査項目にする金融機関が9割を超えていました。事前審査に落ちたときは、信用情報の確認、ほかの借入の整理、借入額と期間の見直しから始めてください。そして、審査に通る金額を目指すより先に、家計にとって無理のない金額を知っておくことが、長く安心して暮らすための近道です。判断に迷ったら、売る商品を持たない立場の相談相手を使ってください。
この記事の出典
- 国土交通省「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 正誤表」(令和8年6月):https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002004971.pdf
- 住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」(2026年4月1日現在):https://www.flat35.com/loan/flat35/conditions.html
- 住宅金融支援機構「新機構団体信用生命保険制度」:https://www.flat35.com/danshin_menu/shin-danshin/index.html
- CIC「信用情報の保有期間」:https://www.cic.co.jp/guide/credit-information/possession/
- CIC「インターネットで開示」:https://www.cic.co.jp/credit-report/online/
